鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
その部屋に1歩足を踏み入れると、そこはまるで異世界のようだった。よくファンタジー映画で見る、魔女の部屋そのものだった。
通路にはびっしりと古びた本が並び、至る所にビーカーや薬草、虫の標本、蝋燭や瓶が置いてあった。臭いも独特で漢方のお店に入った時の、土や草などの少しくすんだ匂いがした。ランプには不思議な光りがあり、火ではない事もわかった。きっとこれも魔法なのだろうと、空澄はまじまじと見つめた。
その後、細い通路が下へ続く階段になっており、最後まで降りると小さな部屋が見えてきた。木製の机が2つ置いてあり、今まで誰かが作業をしていたかのように、本や草などが乱雑に置いてあった。
「ここで、お父さんとお母さんが働いていたの?」
「そうだな。まぁ、勉強したり、薬つくったりしてた。そして、俺はそのソファで定位置だったな」
壁際に置いてある茶色の皮のソファ。そこには、大きなフワフワのブランケットがかけられていた。そこで彼は夜になると寝ていたのだろう。床に黒い羽がいくつか落ちていた。
「ここには資料も沢山揃ってるし、何より空澄の両親が残している大切なものがある。だから、ここからいろいろ探して勉強していこう」
「うん。わかった………よろしくお願いします。」
そう言って、空澄は彼に頭を下げると、希海は笑顔で頷いた。
「スパルタでいくから、頑張れよ」
「うぅ………でも、早く覚えたいから頑張るよ」
「よろしい」
腕を組み、まるで先生のように言う希海を見て、思わず微笑むと、希海も笑っていた。