鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする


 それからは、ひたすら見たこともない文字を必死に覚えていくしかなかった。
 英語を覚えた時のように、実際に声に出して読んだり、紙に書いて文字に覚えるしかないのだ。元々、物を覚えるのは得意だったので、空澄は新しい国の言葉を覚えていく感覚で楽しんで勉強出来ていた。

 昼食を挟み、夕方まで勉強をした所で、空澄は大体の文字を言えるように出来るようになっていた。


 「すごいな。1日でここまで覚えられたら上出来だ」
 「本当?よかった」


 希海は驚きながらも、空澄を褒め頭を撫でてくれる。まるで、本当の家庭教師のようだなと、空澄は思った。


 「じゃあ、今日はこれぐらいにするか」
 「うん。ありがとう、希海」


 そう言って空澄はお礼を言った後にソファから立ち上がろうとした。けれど、空澄の左手首を掴まれ、希海に腕をひっぱられソファに戻されてしまう。


 「希海?」
 「ほら、今日の報酬は?」
 「あ………ん…………」


 空澄が言葉を発する前に、希海に唇を塞がれてしまう。魔力を渡すための口づけ。
 希海の舌の感触に、空澄は体を震わせた。

 報酬の事を忘れていたわけではなかった。
 いつ希海とキスをするのか。空澄は少しだけソワソワしてしまっていた。

 希海のキスに翻弄され、ボーッとした思考のまま、これからは夕方に近づくにつれてドキドキしてしまいそうだな、と空澄は思った。



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