鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 「………今さらだけど、ここで助けてくれて、ありがとう。希海」


 沼からの帰り道。
 希海は今更だが、希海にお礼を言った。あの時は何が起こったのかもわからず、そして希海が誰だかもわからなかったので、ちゃんと言葉にできてないと思ったのだ。
 横で歩いていた希海は、「何だ、今さら」と笑っていたけれど、空澄はその後も彼に言葉は伝え続けた。


 「だって、溺れかけて死にそうになって………苦しくて、仕方がなくかったの。そこで呪文を唱えたら、風が自分を包んでて……突然、いろんな事が起こってパニックになってしまってたから。希海が居てくれてとても嬉しかったんだよ」
 「空澄を助けるのが、俺の仕事だから。そんなに気にしなくていい」
 「………うん、ありがとう」


 希海は尚美の使い魔。尚美に命じられて、希海を守る事になったのだ。それは希海から話しを聞いていた。
 そのはずなのに、希海の言葉を聞いて、何故だか胸が痛くなった。



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