鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
気づくと、空澄はタクシーに乗っていた。隣りには希海が居た。そして、彼の手は空澄の手を握っており、そして、空澄の手を彼の手を握りしめていた。
「………希海………」
「どうした?」
「なんか、ボーッとしちゃってて……私、タクシーに乗ってるの今気づいたの。何か変なことしてなかったかな?」
「大丈夫。そんな事してない」
「そっか、よかった」
笑顔で彼に返事をしたはずなのに、彼の表情は曇っていた。それでも、彼が手を握ってくれる感触だけが、空澄を安心させてくれ、隣に居れば大丈夫と思えた。
家に着いてから、空澄は自分の部屋に戻ろうとしたけれど、それでも希海は手を離してくれなかった。空澄はその繋がれた手を見つめながら、希海に話しかけた。
「もう家に着いたから大丈夫だよ。ありがとう、希海」
「………大丈夫じゃないだろ?」
「……ごめんなさい。今は一人にさせて」
彼の手を離れようと、優しく腕を引いたけれど希海はがっしりと手を掴み離してくれなかった。
空澄は困った顔を見せながら、「希海、ふざけないで。本当に、一人になりたいの。だから、離して」と、少し強い口調で彼に言うが、希海は空澄をじっと見つめたまま動かなかった。
空澄はまた、「離して」と言おうとした瞬間、彼に腕を引かれあっという間に彼の腕の中に閉じ込められた。
希海に抱きしめられている。それがわかり、空澄は体を固くさせた。