鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
そんな日が続いたある日。この日は警察署に行き、時間があれば自分の会社にも行こうと思っていた。
「俺も行かなくて本当に大丈夫か?」
「だって、希海はお店の買い出しに出掛けないといけないんでしょ?わざわざお客さんが来てくださって、売り切れなんて申し訳ないわ」
「………そうだけど……」
「大丈夫よ。ほら、希海におまじないかけてもらった宇宙ガラス、しっかり持っていくから」
空澄の胸には、璃真から誕生日プレゼントで貰った宇宙ガラスのネックレスがキラキラと輝いていた。高価なものだし、彼からの最後のプレゼントだと思うと大切にしまっておきたかった気持ちもある。だが、それではせっかく彼がくれた綺麗なプレゼントが勿体ないとも同時に思ったのだ。形あるものはいつか壊れてしまう。それまで、大切に使った方が璃真も喜んでくれると思ったのだ。
そして、そのネックレスをして出掛けようとした所、希海も用事があり一緒に出掛けられないとわかったのだ。心配性の希海は、その宇宙ガラスを見て、「じゃあこのガラスに、空澄を守るまじないをしておく」と言ったのだ。
ガラスはまじないを保存できる物質なのだそうだ。
希海がプレゼントしてくれた物に、まじないをしてもらう。彼もきっと喜んでくれるだろうと思った。
「じゃあ、行ってくるね」
「あぁ。気をつけろよ。何かあった、連絡しろ」
「わかった。希海も気を付けてね」
そう言って、空澄は希海に小さく手を振って家を出た。
会社に行く予定があるので、少ししっかりとした服装に身を包んでいる。髪をまとめて、派手すぎないメイクで清潔感出していくと、どこからみても普通のOLに変身する。もう何年もこんな風に働いてきたのだ。何だかついつい気合いが入ってしまう。
そして、こんな服装をして出掛けるのもこれが最後。そう思うと少し寂しくもあった。
ヒールをカツカツッと響かせて、空澄はまっすぐ前を見て歩き始めた。