鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「っっ………」
咄嗟に左の二の腕を右で押さえると、何かに斬られたような傷が20センチほど出来ていた。そして、そこからポタポタと血があふれ、ブラウスや手、そしてアスファルトの上に落ちていく。今日は気温が高くなり、空澄はジャケットを着ていなかった。白いブラウスはどんどん真っ赤に染まっていった。
痛みに耐えながら後ろを振り向くと、そこにはカッターを持った少年がこちらを向いてニヤリと笑っていた。その笑い方はとても暗くそして狂気に満ちたもので、小学生の表情とは到底感じられないものだった。そして、その男児はカッターについた空澄の血液を指ですくうと、今度はその指を口に入れて舐めたのだ。
「なっ………何をしてるの…………」
「何って、おねーさん、魔女でしょ?だから、魔力を貰ってるんだよ。でも、これじゃあ足りないなー」
「………っっ!!」
物欲しそうな目でぎろりと空澄を見たと思うと、また少年はこちらに向かって走り出した。
その狂気の瞳は赤くなっているのがわかった。キラリと光る瞳とカッターナイフ。目前まで迫る少年と血のついた刃。空澄は恐怖のあまり、目をつぶって手を少年にかざして叫んでいた。
「やめてっ!!」