夜華
サクラ

鮮やかなドレスに煌びやかなイミテーションのダイヤモンドが揺れて眩しい。


シュワシュワと泡を立てたシャンパンを片手にたわいも無い会話があちらこちらから笑声と共に響きわたる。


日常を忘れるようなこの派手な空間にももう慣れた。




「ミオちゃ〜ん、もっと近くに寄ってよ。手握ってもいい?」


「もう!前田さんってば、恥ずかしいよ…」




いつもと変わらない色恋じみたコミュニケーション。


あと何年この仕事をすれば慣れるのだろうか?


顔では笑っていられても内心はストレスで溢れかえる。


毎日仕事とはいえ嘘を重ねる事は心が痛む。


この空間にいる限り私は常に誰かのワタシで居なければならない。


恋愛感情をお金で買われた心無きドールのようだ。


複数人の擬似彼氏が居る生活を続けてはや2年が経つ。




さらりとした黒髪に店でも珍しい薄化粧の私は、その素朴さが年上の男性陣からは純情そう・穢れを知らない・手が届きそうな存在だ。と思われ


気がつけば CLUBシェリー でもランキング上位に入るほどの売れっ子に成り果てていた。




シェリーの売れっ子達は私以外みんな派手目で綺麗なお姉さん系の方ばかりなので、私は完全にお店でも浮いた存在ではあった。




1人だけOL風な容姿の私は、いつまで経っても素人感を売りに自分のキャラクターを作り上げていた。


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