夜華
ハーデンベルギア
「いらっしゃいませー!」

ボーイさんの声がホールに鳴り響く。

週中でもう1時を回っているのに、まだお客様が入る事にびっくりした。



「ミオちゃんご新規1名様お願いするね〜」

と付け回しのボーイさんに言われて、はーいと待機席を立つ。



「お待たせしました。ミオさんです!」

とエスコートされ一人の男性の隣へ座る。



パッと見は30代半。髪はツーブロックに長い髪をオールバックにしてパーマをかけている。ぴっちりとワックスで固められていて営業マンかのようなスタイリング。蒼い小花柄のシャツにジャケットとパンツのセットアップ。靴はスニーカーでカジュアルにまとめられている。髭が男の色気を醸し出している。

多分サラリーマンでは無さそうだ。

外見からあんまりキャバクラに来るタイプのお客様には見えない…。何を話そう?と考えてると



「ミオちゃん?綺麗な赤いドレスだね。何か飲んでね。若いでしょ?何歳?」

と話を振ってくれた。



「有難うございます。22歳です。私はなんてお呼びしたらいいですか?」



「あはは、硬いよ。リラックスリラックス。俺の事は孝介って呼んでね。」

優しい声で気を使って言葉を選んでくれているような気がした。

最初の印象は笑顔の素敵な色気ある大人の男性。二重のくっきりした目から放たれる視線が肌にピリリと刺激を感じる。

つい背伸びして弱いクセに キティ なんか頼んでしまった。



「孝介さんは若そうであまりこういうお店に来る感じじゃないから…あっ、良い意味でですよ!なんだか緊張しちゃいます。」

…と営業ではなく本音がこぼれる。



「ちょっとまって、何歳に見られてる?俺、41歳だよ。笑 確かに久しく来てないかも。普段1人じゃ絶対に入らないかな。今日も外で客引きのお兄さんに土下座されて入ったの。笑」



「?!41なんですか?…失礼しました。お洒落だし肌も綺麗だから30代半ばくらいかと…。そうだったんですね。孝介さんモテそうだもん。」

…びっくり。まさか私と19も差があるなんて。
お世辞抜きで41歳には見えなかった。



その後も和気あいあいとした会話が続く。

話の中で分かった事は、デザインのお仕事をしていて海外出張なんかも多いらしく写真を沢山見せてくれた。

コミュニケーション能力が高いのは経験値が高いからなのか。私の方が楽しませてもらってしまった。



15分で女の子が交代になる店のシステム。

いつもなら長いと感じるのに、今この15分はあっという間に感じる。

仕事柄私が男性をリードするのに、孝介さんは女慣れしていて完全にペースを持っていかれる。



「ミオさんお願いしますー!」

ボーイさんに呼ばれてしまった…。

はい。と一言ボーイさんに告げて私は キティ を飲み干した。


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