恋叶うオフィス
30分後、寝ている武藤に声をかけた。気持ち良さそうに寝ているから起こすのがかわいそうになるけど、食べたあとに薬も飲まなくてはならない。


「武藤、起きて。テーブルまで行ける? それともここで食べる?」

「ん……、テーブル行く……」

「用意するから、来てね」


ぼんやりした顔で掠れた声を出した武藤は、ゆっくりと上半身を起こす。それから、私の手首を掴んだ。先に行こうと思ったけど……上目遣いで見られて、進めなくなる。


「一緒に行く?」

「うん……」


ベッドから降りるのを待った。弱ってる彼はいつもより素直だ。母性本能がくすぐられるかも。

ベッド横に立つ彼に手を差し出すと握ってきた。やっぱりかわいい……。こんな武藤もいいな。

ダイニングテーブルまで行き、武藤を座らせてから土鍋を持ってきた。彼の前に置いて、蓋を開ける。

「おおっ」と目を輝かせた武藤に顔がにやける。私が作ったのは、鍋焼うどん。真ん中に玉子も入っている。


「どうぞ。熱いから気を付けて、食べてね」

「鍋焼うどん、すごい久しぶり。うまそう」

「口に合うといいけど」
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