恋叶うオフィス
今朝は昨日のことを考えて、ドキドキしていたけど、それどころではなくなったから忘れていた。ううん、忘れてはいないけど、考えないようにしていた。

武藤はきっと昨日のキスのことを言おうとしている。また謝られたら、どうしよう。


「実は……ところどころ記憶が曖昧でさ」

「えっ、覚えていないの?」

「渡瀬の部屋に入って、水をもらおうと待っていたところから……なぜかトイレにいて、なんでトイレにいるんだろうとなって、体が熱いなと首とか触ったら、熱がある感じだったから、急いで帰ったんだけど……」

「あー、うん……。あのときから熱があったのね」


武藤が熱かったのは酔っていたのではなくて、熱があったから……でも、記憶が抜けているのは酔っていたせい?

武藤は上半身を起こして、私を見据える。


「実は、昨日の朝から風邪気味だったんだよね」

「ええっ? のんびり飲んじゃダメだったじゃないのよ」

「うん。でも、同期会だったし、渡瀬が心配だったから」

「私?」
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