恋叶うオフィス
「……で、渡瀬の舌がなんかすごく気持ちよくて……」

「武藤……恥ずかしすぎる。それ、現実だから……」


私は顔を両手で覆った。覚えてないなんて、嘘だ。そんなにハッキリと覚えているじゃないのよ……。

覚えていてくれたのは一応嬉しいが、言葉で表現されるのは困る。武藤は現実だと言われて、絶句した。

指の隙間から武藤の様子をそっと窺う。彼の顔は耳まで真っ赤だ。恥ずかしいことを言うのが、悪い。


「現実? えっ、俺……なんで覚えていない?」

「は? ……覚えていたじゃないのよ?」

「だって、夢かと……ええっ、夢じゃないの?」

「だからー、夢じゃないって言ってるでしょ? 今武藤が話したキスを私たちはしたの! 私は確かに武藤が気持ちいいと言ったのを聞いたからね」


混乱する武藤に苛立って、つい強い口調になってしまった。夢ではなくて、現実に起こったことだから、しっかりして欲しい。

まだ混乱している武藤はベッドから降りて、私の方へと向いて、立ち……。


「渡瀬……。うわっ……」

「ちょっ、むと……キャッ……」
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