恋叶うオフィス
「渡瀬、明日のことだけど……」

「ひぃ!わわっ……」

「なんだよ、その反応」


見ていない方向から突然武藤が現れた。こんな心臓によくない声かけをしないで……。ガタンと椅子をデスクにぶつけて慌てる私を百々子ちゃんが笑う。

武藤は訝しげな表情を見せていた。落ち着きがなくて、ごめん……。


「渡瀬さーん、驚き過ぎですよ」

「そうだよ。お化けでも見たような顔しないで」

「だ、だって……いきなり……出てくるから。はあ……。で、えっと、なに?」


ビックリして急速に動き出した心臓に手を当ててて、軽く深呼吸し、用件を問う。彼は私のデスクに片手をつく。

ちらりとその手を見る。細いのに指の関節が男らしくしっかりしている。私の好きな手だ。


「宇野が明日の打ち合わせ時間を一時間ずらして、14時からにしてもらいたいって言っている。うちの課は大丈夫だけど、そっちも確認してくれる? ……渡瀬? おーい、聞いてる?」

「ああ、うん! 聞いてるよ。うん、わかった! すぐにスケジュールを確認して、連絡するね」

「うん……よろしく」
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