恋叶うオフィス
武藤の顔でなく、手を見て聞いていた。さっきまで思い浮かべていた顔と目を合わせるのが恥ずかしかったから。

少々しどろもどろな返事をする私に、武藤は苦笑する。なんだか気持ちを見透かされているような感じがして、肩を竦めた。

今は仕事をする時間。つい武藤を目で追ってしまうけど、やるべきことはやる。まずは明日のスケジュール確認だ。

開発部が二名、営業部が企画課と販売課を合わせて四名で来年度のノベルティについて打ち合わせする予定となっている。

私は自分のと主任のを確認した。私は変更に問題はないが、主任が打ち合わせ後の15時から来客対応予定となっていた。打ち合わせに要する時間は90分と見ている。60分で終わらせるのは難しいかも。

頬杖をついて、眺めていたスケジュールの画面をそのままにして、武藤のもとへいく。

彼は私が近付くと、見ていた資料から目を離して、微笑む。ドキッと鼓動が大きな音を立てる。

今までも武藤の笑顔にはときめいていたけど、なんかいつもより笑顔に甘さがあるように感じて、戸惑う。
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