恋叶うオフィス
こんなふうに軽く誘えるのは同期の特権かなと口元を緩ませる。

オフィスの裏通りにあるラーメン店に入った。すでにカウンター席は埋まっていて、端の二人席が空いていたので、そこに座る。


「渡瀬、餃子食う?」

「食べたい」

「じゃあ、頼んで半分ずつ食べよう」


こんなふうにシェアできるのも同期の特権だなと私はまた口元を緩めた。そんな少々機嫌のよい顔をする私を武藤が笑う。


「そんなにもラーメンと餃子が食べたかった?」

「うん。ここの美味しいもの」

「まあ、確かにね。渡瀬は感情が顔に出やすいから、分かりやすいよね」

「えっ? そうかな?」


ラーメンと餃子に喜んでいるのではなく、武藤とランチできることに喜んでいたのだが……。

うれしいときは顔を綻ばせてしまうけど、分かりやすいと言われて、もしや武藤への恋心もばれてるのでは?と心がざわめいた。

楽しそうに笑って、お冷やを飲む武藤から視線を外した。目を合わせて、じっと見ることができない。


「ん? どうかした?」
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