恋叶うオフィス
私だけではなく、そのふたりを見ていた周囲の人たちも「あのふたり、お似合い」と話していた。

私にはふんわりしたかわいさがない。昔からかわいいと言われたことがほとんどない。よくてきれいと言われたが、かっこいいと言われることが多かった。

あと一センチで170センチになる身長と、スレンダーと言われる色気のない体型から、そう言われているのは自分でも理解している。

この体型をモデルのようだと羨望の眼差しを向ける人もいるけれど、女に生まれたからには女性らしい容姿になりたかったと何度思ったことか。

武藤の隣に似合うような女性に……。


「渡瀬さん、おはようございます。そのチョコ、もらいものですか?」

「おはよう。あー、うん。武藤からの誕プレ」


私の隣に座る小坂百々子(こさかももこ)ちゃんは、なにかと目ざとい五才下の後輩である。


「渡瀬さん、今日誕生日なんですか? おめでとうございます! 武藤課長、覚えているなんてすごいですね」

「まあ一応友だちだし、武藤からしたら覚えやすい日なのよ」


私と武藤の誕生日は一か月違い。武藤の誕生日は来月の二十五日。二十五日は給料日でもあるから余計に覚えやすい。
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