恋叶うオフィス
藤田くんって、こんなにもあけすけな物言いする人だった？


「おいおい、藤田くん……。渡瀬にそんな質問しないでよ。俺たちのことを周りにとやかく言われたくない。余計な干渉しないで」


呆然と口を開ける私の代わりに武藤が答えた。私は「うん」とだけ頷く。

なにかと私たちのことを気にしすぎる人が本当に多い。そんなにも私たちは周りから見ると、知りたくなる関係に見えるのだろうか。

武藤に釘をさされた藤田くんは、肩を竦めて「すみません」と言った。武藤の声が本気だったから、もう藤田くんが聞くことはないだろう。


「渡瀬は、このまま戻る？」

「ううん。四時に他で打ち合わせあるのよ」

「そうか。俺もこれから店舗を二軒行く。藤田くんは？」

「俺は戻ります」


駅から先の目的地は三人とも違い、私たちはバラバラになる。だけど、武藤とは行き先の路線が同じだったから、同じ電車に乗った。

先に降りる武藤に手を振る。彼は降りる時に「あ」となにかを言いかけた。ドアが閉まる寸前だったから、続きを聞けなかった。なんだろう、気になる……。
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