恋叶うオフィス
来る途中のスーパーで買ってきたと渡されたビニール袋の中には、缶ビールが10本も入っていた。


「わあ、たくさん! ありがとう。入る、入る」


ふたりで飲むには多い量ではあるが、少し冷蔵庫の中を整理して、全部冷やすことが出来た。

テーブルに置かれているたこ焼き器とボールに入った生地、具材を見た武藤が目をパチクリさせる。


「たこ焼き?」

「花火大会だし、気分的にたこ焼きかなと思って。武藤、タコアレルギーじゃないよね?」

「うん、大丈夫。へー、家でたこ焼きって、初めてだ。楽しそう」

「初めて? 早速やる? 花火始まるまでに食べよう」


物珍しげに見ていた武藤がうれしそうに頷く。迷ったけど、たこ焼きにしてよかった。

武藤がこの部屋にいるのが、ちょっと新鮮だ。改めて彼の服装を見る。

ブランドロゴが左胸にプリントされた白色Tシャツに、ベージュ色のチノパン。ラフだけど、よく似合っている。


「あ、その前に噂のベランダを見ていい?」

「噂になってはいないけどね。うん、ここの窓から行けるよ」


武藤が興味を示したベランダには、テーブル横の窓から行ける。
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