恋叶うオフィス
窓を開けると、むわっとしたあたたかい空気が入ってくる。今日のためにサンダルをふたつ用意していた。

武藤はそれを履いて、ベランダに出る。私もあとに続いた。まだ外は明るい。ふたりで並ぶとやはり狭い。


「ねっ、狭いでしょ?」

「うん。でも、想像よりは広いよ。ふたりで並んでも肩がぶつからないし」

「あー、そうだね。武藤が細いからだよ」

「えっ……」


突然武藤かビックリした声を出したから、私は首を傾げた。なんか変なこと言ったかと不安になる。


「あー、いや……。俺よりもでかい人とここで、並んだことあるの?」

「えっ?」


今度は私の目が丸くなる。武藤の質問の意図が不明だ。どうして、そんなことを聞くの?

でも、質問に質問で返さず、武藤の質問に答えた。


「ここに引っ越ししてきた時に、兄が手伝ってくれて、狭いなーとふたりで笑ったの。兄の体型は武藤よりもがっしりしてるから、肩がぶつかったんだよね」

「あー、お兄さんか。渡瀬のお兄さん、大きいんだね」

「背は武藤くらいだけど、横幅があるのよ」


武藤は「なるほど」と頷いてから、私を上から下まで見る。今度はなに?
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