恋叶うオフィス
慣れない視線に戸惑う。


「今着てる服、部屋着?」

「えっ、ううん。近所着!」

「近所着?」

「うん。徒歩で出掛けられる範囲の服。近所のスーパーとかドラッグストアとかはこの格好で行くかな」


私の説明に武藤はまた「なるほど」と頷く。今日の服装はかなり悩んだ。

自分の部屋だから、お出かけ着ではおかしいし、だからといって部屋着ではだらしないしと……カットソー素材のノースリーブワンピースに五分袖のカーディガンを羽織った。

武藤は再度服を見て、微笑む。


「見たことない服装だから、新鮮だと思ったけど、よく似合っていて、かわいい」

「えっ? あ、うん、ありがと……」


なんの前触れもなく褒められて、しかも「かわいい」とまで言われて、私の顔は熱くなった。武藤から「かわいい」と言われたのは初めてで、心臓が急速に動きだした。

ドキドキさせないで……。


「やっぱり外はまだ暑いね。武藤、中に戻ってたこ焼き作ろうよ」

「ああ、そうだな。やろう」


赤くなっているであろう顔を隠すために、部屋に戻ろうと促した。
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