恋叶うオフィス
狭いベランダで持ちやすく、食べやすいようにとたこ焼きと枝豆はそれぞれ紙コップに入れる。


「お、枝豆!」

「ビールといえば、枝豆でしょ?」

「うん、いいね」


武藤がビールとたこ焼きを持ち、私がビールと枝豆を持った。しかし、両手がふさがっているから、飲めることは出来ても、食べることが出来なくて困った。

狭い空間に置ける台になるものはないかと部屋に戻って探すけど、いいものがなく、カップふたつが乗る大きさのトレイを持っていく。


「一応ここに置くけど、足元気を付けてね」

「うん」


私たちが立つ後ろに紙コップをふたつ乗せたトレイを置く。食べるときは身を屈ませないとならないので、この狭さでは体制が苦しくなりそうだけど、これしか方法は浮かばない。


「あ、始まった」

「おおっ、結構よく見えるし、音もちゃんと聞こえる。すごい」

「でしょ? 遮るものがちょうどここに何もないから、見えるんだよね」


四階と低い階なのに、見えるのは奇跡だった。この奇跡をほぼ毎年ひとりで楽しんでいた。

でも、今年は奇跡が重なった感じ。まさか好きな人と見ることができるなんて、うれしすぎる。
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