恋叶うオフィス
戸惑う距離
花火大会のあとから、私たちはギクシャクしていた。あの日から一週間が経過しても、そのギクシャクは変わらない。
「武藤課長となにかありました?」
業務上のやり取りを短く終えた私たちを見ていた百々子ちゃんが、不思議そうな顔で訊く。
私は武藤から渡された資料を自分のデスクに置いてから、答える。
「なにもないけど?」
「そうですか? 最近のふたり、前みたいに仲良さそうに見えないから、喧嘩でもしたのかと思ったけど、なにもないんですね?」
「喧嘩なんてしてないよ。別に前と変わらないつもりだけど」
「さっきから、けど、けど言ってますよ。けど、なんですか? やはりなにかあったんでしょう?」
百々子ちゃんの鋭い指摘に私は目を丸くした。ないもないと言いながら、無意識に『けど』を連発していた。
けど、何が言いたいのか……続く言葉は無意識に打ち消していた。
なにかあった……なにかとはあのキスしかない。でも、あのキスをオフィスで軽々しく口に出せない。
オフィスでなくても、社内の人には誰にも言えない。
「武藤課長となにかありました?」
業務上のやり取りを短く終えた私たちを見ていた百々子ちゃんが、不思議そうな顔で訊く。
私は武藤から渡された資料を自分のデスクに置いてから、答える。
「なにもないけど?」
「そうですか? 最近のふたり、前みたいに仲良さそうに見えないから、喧嘩でもしたのかと思ったけど、なにもないんですね?」
「喧嘩なんてしてないよ。別に前と変わらないつもりだけど」
「さっきから、けど、けど言ってますよ。けど、なんですか? やはりなにかあったんでしょう?」
百々子ちゃんの鋭い指摘に私は目を丸くした。ないもないと言いながら、無意識に『けど』を連発していた。
けど、何が言いたいのか……続く言葉は無意識に打ち消していた。
なにかあった……なにかとはあのキスしかない。でも、あのキスをオフィスで軽々しく口に出せない。
オフィスでなくても、社内の人には誰にも言えない。