恋叶うオフィス
「渡瀬は脚がきれいなのに、あまりスカート履かないよな。もったいない」

「だって、パンツの方が動きやすいし、落ち着くから」

「まあパンツでもきれいには見えるけど、たまにはスカート姿も見たい」

「武藤……それ、セクハラ発言になるからね」


きれいと言われたのが恥ずかしくて、ついひねくれた返事をしてしまう。素直にお礼が言えない自分に嫌気がさす。

だけど、武藤は嫌味な言葉に対しても穏やかに返してきた。


「いいじゃないかよ。渡瀬にしかこんなことは言わないしさ。他の社員に言って、白い目で見られたり、訴えられたら困るからね。渡瀬だからつい言ってしまうんだよな。許して」


いたずらが見つかった子供みたいに弱々しく笑う姿を見せられて、許します!と即答しそうになった。

こんな顔、他の人には見せないんだろうなと思うと、同期であり、友だちであり、仲間であるこの関係を大事にしたくなる。


「全く武藤は仕方ないな。私だからいいけど、他の女の子に言わないよう気を付けてね」

「うん、気を付けるよ」


素直に返事をして、嬉しそうに微笑むから胸が高鳴った。
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