恋叶うオフィス
武藤がいたら、宇野くんにハッキリとした気持ちを伝えにくくなる。実はもう答えは決まっていた。断るつもりだ。

宇野くんは強引は部分はあるけど、男らしいし、優しい。でも、私が好きなのは武藤だから。

報われない恋かもしれないけれど、結婚願望がまったくない彼が誰かと結婚するまで好きでいたい。

もしずっと誰とも結婚しないでいるなら、私は今の関係を続けたい。想い続けたい。


「関係ないか……。そうだよな」

「うん……。で、話があって来たのよね? 聞くよ?」

「あー、うん。……返事が決まったかどうか聞きたかっただけ。まだ決まってないのか。まあ、そうだよな。一生のことだから悩むのも当然だよね」

「うん。宇野くんじゃない人に言われたら、即答するけどね」


私の言葉に武藤は「えっ?」と瞳を揺らした。もし武藤に言われたら、迷うことなく承諾する。武藤から言われることはないけど。


「それって、例えば誰に?」

「そんなの好きな人に決まっているじゃない。好きな人から言われたら、うれしいもの」

「渡瀬、好きな人いるの?」
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