恋叶うオフィス
彼の笑顔は最高にかっこいい。独り占めしたくなるくらいに。

武藤は手を伸ばせば届きそうなのに、届かない。だから、独り占めはムリ……笑顔から目を逸らして窓の外を見た。上を見上げれば、気持ちの良い青空が広がっている。

視線を空から下、そして右にと動かすと私たちの勤めるオフィスビルが目に入る。誕生日に仕事って、ちょっと悲しい。

「いい天気……」と呟く。こんないい天気に仕事とは……有給取って、のんびり過ごしたら良かったかな。

でも、休んだら武藤に会えないし、今ランチも出来ない。20代最後の年と沈みかけていた気持ちが上がったのは武藤のおかげ。


「朝から天気いいとさ、仕事行きたくなくなるよね」

「武藤でもそうなの?」

「俺でもって……。俺、そんなに仕事人間じゃないからね」


武藤は同期の中でも仕事が一番できて、課長になるのも一番早かった。だから、仕事が好きでがんばった成果と勝手に思った。

でも、今の武藤の言い方だと課長になったのがうれしくないように感じた。


「ねえ、武藤。やっぱり課長になってから大変?」
< 8 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop