恋叶うオフィス
武藤の質問に言葉を詰まらせる。ここで、それは武藤だよ……とさすがに言えない。


「いるよ」

「誰?」

「内緒」

「内緒って……。でも、好きな人がいるのに迷うの?」

「だって、好きなだけだから」


ずっと好きでいようと決心はしてるから、迷う気持ちはないけど、それも武藤には内緒だ。


「じゃあ、宇野への返事はいつ俺に教えてくれる?」

「えっ、ああ……そうね。火曜日の朝に教える。それまでには決めるから」


答えはもう決まっているから、私はスッキリした顔で笑った。武藤はそんな私を眉根寄せて見る。


「本当はもう決まっているんじゃないの?」

「……っつ! ううん、まだ悩んでる。宇野くん、男らしくて頼りになるから、結婚相手にいいのかもって」


客観的に考えたら、宇野くんは良い旦那さんになると思う。だけど、私が求めるのは良い旦那さんじゃないのよね……。


「宇野みたいなタイプなら、しっかり守ってくれるだろうね。でも、俺だって……」

「ん? 俺だって、なに? 」
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