恋叶うオフィス
「あー、なんでもない。火曜日の朝、オフィス前のカフェで待ってるよ。ついでに渡瀬の好きな人も教えてくれる?」

「ううん、それは教えられない」

「そうか、残念だな」


武藤はわざわざケーキを買って、ここまで来たのに納得行く話を聞けずに帰っていった。

私としては、休日に会えたのはうれしいし、ケーキを買ってきてくれたのもうれしいけど、わざわざ来た理由が掴めなくて、モヤモヤが募った。


そんな晴れない気持ちのままで、火曜日の朝に武藤の指定したカフェのドアを開けた。朝から外は暑いので、冷房が効いている店内に足を踏み入れてホッとする。

武藤は窓際の二人用テーブルに座って、新聞を読んでいた。


「おはよう」

「おう、おはよう」

「早いね」

「うん、早く目が覚めたから」


私はコーヒーだけを注文したが、武藤はピザトーストも食べていた。普段は家でちゃんと食べていると聞いていたから、珍しい。

あまり待つことなく運ばれてきたコーヒーにミルクを入れて、混ぜているとトーストを食べ終えた武藤が小さく咳払いをする。
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