恋叶うオフィス
どことなく改まった感じに笑みがこぼれた。笑う私につられたのか、武藤も笑う。


「武藤が緊張した顔するなら、おかしくなったじゃない」

「だよな。俺も自分でなにを緊張しているんだかとおかしくなった」

「武藤のことじゃないのにね。私と宇野くんのことでしょ?」

「まあ、そうだけどな。で、なんて答えるの? 決まっているよね?」


少し表情をやわらげた武藤は、質問したあとにコーヒーを飲む。視線はずっと私に向いている。


「うん、決まった。宇野くんには今夜、断る」

「大丈夫か? 俺もついていこうか?」

「なんで武藤が?」

「アイツ強引だから、納得できないと迫るかもしれないだろ? 俺がいたら、助けてやれるから。……渡瀬が心配なんだよ」


心配する言葉に胸がキュンとなる。私のことを考えて心配してくれるのは、うれしい。

しかし、私は何度、武藤の優しさに惑わされるのかな……。


「ありがとう。でも、大丈夫だよ。宇野くん、ちゃんと話せばわかってくれると思うしね」

「どう説明するつもり?」

「んー、宇野くんを結婚相手に考えられないと……弱い説明かな?」
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