恋叶うオフィス
ちょっと……そんな顔されたら、私まで照れてしまうじゃないの……。

予想もしていない反応に鼓動が高鳴った。大事とか、守りたいとか、照れる顔を見せるとか、彼を好きな私の心臓に悪いことばかりだ。

朝から困る。仕事に集中できないかも。

窓の外を見ていた武藤はいきなりテーブルに手を付いて、立った。今度は、なに?

またもや予想外の行動に私は目をぱちくりさせる。


「そういうわけだから、よろしく』

「えっ、ちょっと武藤?」

「会議前に確認したいことを思い出したから、先行くね。渡瀬はまだ時間までのんびりしていて」

「えっ、あ……」


武藤を引き留めようと伸ばした私の手は、空を切った。

さっさと出ていく武藤の後ろ姿を見て、肩の力が抜けた。さっきまでドキドキしていた気持ちも抜ける。

武藤の気持ちが本当にわからない。一度しっかりと向き合って、話したい。でも、勇気がでない。

惑わされても、確かめるのは怖い。ぐるぐるといろんな思いが頭を回る。

とにかく今一番にやることは、宇野くんを断ること。そこだけは揺るがない気持ちがあると、コーヒーを飲み干して、私もカフェを出た。
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