恋叶うオフィス
私たちは一時期、間に溝があった感じだったが、宇野くんを断ったことにより、元通りになった。

友だちとして、お互い大事にしている関係だけど、これでいいと思っている。夏期休暇で実家に帰省したとき、両親からいい人はいないのかと聞かれた。私はいい友だちがいるから、今の生活に満足していると答えた。

今大事にしているものがあるというだけで、精神的な支えになるし、がんばれる。まだ武藤を好きでいられることにがんばれるのだ。

武藤と宇野くんは、「おかしい」「おかしくない」と言い合っていた。どちらも今夜は酔っているせいか、ムキになっている。

私はなだめるように「まあまあ」とふたりの間に入る。


「宇野くん、ごめんね。私、武藤と帰るから」

「結局、渡瀬は武藤に甘いよな。武藤、いい加減に自分の気持ちと向き合えよ。まずはそこからだな」

「自分の気持ち?」

「そう。いい年した大人なんだから、自分で考えろよ。俺、あっち行くわ。じゃあな」


私はカラオケ組に合流しようとする宇野くんに、手を振った。彼は『がんばれ』と口をパクパクさせて、優しい目をした。
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