恋叶うオフィス
私が武藤に甘いのではなくて、ただ武藤のそばにいたいだけなんだけどね……と駅まで歩きながら、武藤をちらりと見る。彼は真っ直ぐ前を向いていて、足取りもしっかりしているが、ほんのり頬に色が付いていた。

かなり飲んでいたから、少し酔っているようだ。


「武藤、大丈夫? どこかでコーヒー飲んで、酔いを覚ます?」

「あー、そうだな。いや、酔いを覚ますなら、渡瀬のとこがいい」

「えっ、うちまで送ってくれるつもりなの?」

「えっ、どこまでのつもりなの?」


通じ合っているようで、合っていない……。微妙に思い違いをしていた。家まで送ってくれたことは今まで一度もなかった。

友だち以上に大事にされているように感じて、武藤の変化にじんわりと心が温かくなる。

素直に送ってもらったから、迷うことなく武藤を招き入れた。


「お水でいいの?」

「うん。冷たい水がいい」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」


キッチンで氷と水をグラスに入れる私の後ろで、武藤は壁に寄りかかって、静かに待機していた。
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