恋叶うオフィス
私の分も同じように入れて、ふたりして立った状態で飲んだ。冷たい水で、頭がスッキリする。小さく息を吐く武藤を見て、口元を緩めた。


「送ってくれて、ありがとう。気をつけて、帰ってね」

「もう追い出すの?」

「えっ? だって、明日も仕事だし、出来るだけ早くに帰って、寝たほうがいいよね? 私も眠いし」


今頭をスッキリさせたばかりだから、正直眠くはない。でも、武藤は眠そうな目をしている。ちょっと充血もしているから。

武藤は空になったグラスをシンクに置いてから、私との距離を縮めた。私のグラスはまだ半分ほど残っていたが、それを彼は取り上げる。

じっと見つめる視線にドキッと鼓動が跳ねた。


「まだ酔ってるから、もう少しここにいたい」

「まだ? お水もう少し飲む?」

「いや、いらない。渡瀬……」

「ちょっ、むと……」


やっぱり充血してる……と見ていると、その瞳が近付いてきて、ふわっと優しく抱き締められた。

これはいったい……どういった状況?
なんで今、武藤の中におさめられてるの?
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