口さけ女と陰陽師
私は口さけ女
私はくち子。名字?そんなものはない。ないといったらない。ただのくち子だ。
最近私が美人で成績優秀で世話好きという噂があるようで、いつも男子に告白されている。
事実といえばそうだが、彼らは知らないのだ。私に彼氏がいない理由を…。
そして何故誰とも付き合わないのかを…。

いや。付き合えないと言った方がいいだろうか。

私には誰にもいってない。誰にも話せない。言ってはならない秘密がある。

それは……。

~ある日の夜~

学校帰りくち子は自販機の前にいた。飲み物を買い、誰もいないのを確かに確認した後、いつもつけているマスクを外した。
そのマスクの下の顔は耳もとまで口がさけ見るにたえない顔になっている。

そう彼女実はくちさけ女なのだ。

くち子が一口飲んだその時だった。カランカラン。
缶が転がるようなぶつかり合うような音がした。

くち子はそっちをみた。するとそこには自分と同じ制服の男子がごみ袋を右手に持ちながら缶を拾っていた。
すでにごみ袋にはたくさんの缶が入っている

くち子の心の声[まずいっ]

くち子はとっさにマスクをつけた

くち子の心の声[み、見られてないよね?]
ドッドッドッっと心臓の音が早まるのがわかる。
でもその男子はこっちをみることがなく、ひたすらに缶を拾っている

どうやら見られてる様子はない

くち子の心の声[こっちに気づいてない?なら今のうちに…]

くち子はゆっくり2、3歩後ずさりし、さっと振り返ったと思ったら全速力で、その場を去った。

男が黙ってその後ろ姿をじっと見つめていたのにも気づかずに。
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