音のない君への告白
夏休みは、二人で色んなところに遊びに行った。上原は耳が聞こえないというハンデを持っているけど、とてもいいやつだ。だからこそ友達が多いはずなのに、こんな冷たい人間のために時間を何度も作ってくれた。

二人で話題の映画を観に行った。観た映画はハリウッド映画。何でハリウッドかと言うと、日本語字幕が付いているから。上原曰く、日本の映画には字幕が付いていないことも多いため、映画は日本のより海外のものを見ることが多いらしい。

映画を観たのは何年ぶりだろう。テレビすら見なくなっていた。上原が「観たい」と言った映画は、女子が好きそうな恋愛ものじゃなくてホラー映画。映画が進むにつれて、あちこちから悲鳴が聞こえてきた。

ギュッと上原が不意に隣に座る俺の手を掴んだ。心臓がドキッと高鳴る。上原の目には、恐怖があった。そして、俺の手を掴んでいることに気付き、「ごめん」と手話をして手を離す。

触れていたところが、まだ熱かった。ドキドキして、手を離してほしくなかった。俺は映画を真剣に見る上原の横顔を見つめる。映画に夢中になっていて、俺の視線に気付いていない。
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