音のない君への告白
「また明日」

明日からまた学校が始まる。上原とはクラスが違うから関わりが少なくなる。そう思うと、少し……。

俺は久々のこの感情に、驚く。それは幼い頃に失ったはずのものだった。



学校が始まって、早数週間。上原とは挨拶をするだけの日もあるが、たくさん話せる日もある。離す時間が多いほど、嬉しくなった。

「ええ〜、この公式はテストに出そうと思っています」

数学の先生の話をぼんやり聞きながら、俺は上原のクラスは世界史だったなと考えていた。隣だというのに、関わりが少なすぎてもどかしくなる。本当に、この気持ちは何なんだろう。

この気持ちについて相談できる友達は、俺にはいない。上原とはこの学校で一番離す人間だが、友達ではないと本能が言っていた。

「十字軍は、中世の西ヨーロッパのカトリック教会の諸国が、聖地エルサレムを奪還するために作られた遠征軍です」

隣のクラスで先生が話す声が聞こえてくる。当然手話はない。上原は先生の口の動きから言葉を理解していると話していた。
< 14 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop