音のない君への告白
上原は俺に背中を向けていて、声なんて聞こえるはずなかった。周りの視線だけが突き刺さると思っていた俺だったけど、上原はゆっくりとこちらを振り返って驚いた顔を見せた。

「音無くん、どうして?」

泣きそうになりながら訊ねる上原が、切ないほど愛おしい。ああ、もう遠くへ行ってしまうだな……。でも、そうなる前に……。

「手紙、読んでここに来た。言いたいことがある。一回しか言わないから、よく見とけ」

俺はそう言い、頬を赤く染めながらずっと使うことのなかった手話を使う。口にしたことのない言葉に、緊張で手が震えた。右手の親指と人差し指を伸ばして喉にあて、指を下げて閉じる。上原が目を見開いた。

「好きだ。俺も、お前に惚れてる」

微笑んで俺がそう言うと、上原の目から涙があふれていく。俺は上原に近づき、その涙を拭った。触れた白い頬は、とても温かい。

「俺、ずっと待っている。お前が帰ってくるのをここで待ってる。だからこの気持ちは捨てる必要はない。お前が来れないなら、俺がそっちに行くからな」
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