音のない君への告白
俺が微笑みながらそう言うと、上原は何度も頷き、「ありがとう」と「私も好き」と繰り返していた。その華奢な体を抱きしめたいけど、それはまた会えた時にしよう。会えると確信しているから……。

北海道に上原が旅立つのを、俺は最後まで見送った。最後に、上原は俺に笑顔を見せてくれた。そこに涙はない。

「また会おう」

両想いになったその日、俺たちは数秒だけ手をつないだ。その柔らかな感触や温もりは、きっと忘れることはないだろう。

俺はまた会う日を心待ちにすることにした。



それから三年後、俺は空港にいる。上原を迎えに来たんだ。

上原は、北海道からこっちに戻ってきてくれた。俺は上原が飛行機から降りてくるのを、今か今かと待っている。

オレンジのワンピースを着て、高校生の頃より大人っぽくなった上原がやって来た。そして、俺の方を見てフニャリと微笑む。ああ、もう体が止まらない。

「おかえり、愛してる。ずっとこうしたかった」

そう言い、俺は上原を抱きしめる。初めて抱きしめた体はとても心地いい。

「愛してる」

上原も、下向きにし左手の甲を右手の手のひらで撫でるように回す。その表情はとても綺麗で、触れ合えなかったぶん想いがあふれていく。

俺たちはまた、抱きしめあった。
< 23 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop