音のない君への告白
今まで出会ってきた人は、みんなどこか嘘をついていて、笑顔の裏には何かを隠していた。人を信じなくなっていくうちに、そういうことが見抜けるようになっていた。

上原の目は、純粋で優しい目をしていた。今まで出会った人間の中で一番綺麗な目をしている。

その目や、俺が怒鳴った時の怯えた顔が脳裏から離れられない。勝手な決めつけで上原を怖がらせてしまった。こんなモヤモヤした気持ちは初めてで、とりあえず調べてみようと思ったのだ。

聴覚障害とは、音や声が聞こえない、あるいは聞きにくい障害だ。聴力や失聴時期、コミュニケーション方法などは個人によって異なる。上原は生まれつき耳が聞こえず、「手話」という手指の動作によってコミュニケーションを取っている。

聴覚障害は、身体障害者と違いパッと見ただけでは障害を持っているかどうかはわからない。そのため、誤解されることもあるらしい。俺はますます後悔する。

とりあえず、分厚い手話の辞書に目を通す。単語を表すものの他にも、指文字と言って人名や地名を伝える時に使うものもあるそうだ。
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