音のない君への告白
俺は調べたい言葉を見つけ、それを記憶する。覚えることは苦手じゃない。むしろ得意な方だ。何度か指を動かす。

明日、上原に会ったら言おう。そう決めて俺はかばんを手に図書室を後にする。

今日は始業式のため部活は休みだ。そのため、いつもはうるさいくらいの学校もやけに静かだ。こんな日も悪くない。また明日からうるさくなると思うと、億劫だ。

学校を出て、俺は家ではなく公園に向かう。家に帰る気はない。帰りたいと思えないんだ。

俺は名字を変えることが面倒で、両親が離婚した時に父親を選んだ。父親はすぐに不倫相手と再婚し、俺はあの家で居場所がない。だから、あの二人が出かけてしまう夜まで帰らないようにしている。もう数ヶ月は会話をしていないな。

公園のベンチに座り、コンビニで買ったパンの袋を開ける。俺が食べるわけじゃない。

「ニャ〜!ニャ〜!」

俺の周りに猫がたくさん集まってくる。高校生になった頃から欠かさずに公園に通っているうちにすっかり懐かれた。でも全然嫌じゃない。
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