音のない君への告白
「あ〜、わかった。ちゃんとやるよ」

俺はパンを催促する猫に苦笑し、パンをちぎって群がる猫たちにわけていく。一生懸命食べる猫たちは可愛くて、頰がつい緩む。人間は嫌いだけど、動物は好きだ。

その時、肩をポンポンと叩かれた。誰だと顔を上げ、緊張が胸に走る。微笑みながら上原が俺を見つめていた。

「動物、好きなの?」

メモ帳に書き、上原はそう訊ねる。俺は素直に頷いた。隣を見れば、上原は猫を抱き上げている。その笑顔はとても無邪気で、まるで子どものようだ。綺麗な表情ばかり見せようとする他の女子とは違う。

昼間あんなことを言ってしまったのに、上原は俺に話しかけて隣にいる。それが不思議だった。普通だったら「怖い人」だと思うはずなのに……。

「な、なあ……昼間のこと気にしてないのか?」

恐る恐る訊ねると、上原はメモ帳にペンを走らせる。

「昼間よりひどいことを言われたことがあるから、全然平気だよ」
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