恋を拗らせている。
俺が入ってきた扉のノブを捻ろうとする弥那。



───『あ、そういえば弥那ちゃん。
噂によると今週末は瑞李と遊びに行くらしいね』



ふと、脳内に過ぎる、今朝の記憶。


思わず、体が動いてしまう。




───バタンッ


「…っ、な…っ、」



慌てたように、振り返る弥那。
当たり前だ。
開けようとした扉が勢いよく押しつけられて開かなくなったんだから、そりゃびびる。



意外に近い顔と顔の距離。
意図せずして、弥那に顔を近づけてしまったらしい。

ふわりと香る弥那の甘い匂いと、ピンク色に染まった焦った弥那の顔。
少し涙をためて俺を睨みあげる瞳。
何もかもが、俺の理性を揺らす。



「…週末、瑞李と出かけんの?」
「な…なんで…そんなこと、聞くの?」


震えた声。
…怖がっている、あからさまに。



「行くのか行かないのか、聞いてんだけど」



それでも、感情のままに責め立ててしまって。
弥那、なにも悪くないのに。
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