恋を拗らせている。
「お前には関係ねーよ」
「否定しないんですね、認めてるのと一緒ですよ」
…本当に鬱陶しい。
なんだこの後輩、知ったような口しやがって。
「うるさい。さっさと行くぞ」
和久を軽くあしらって向かいの扉の施錠に向かう。
和久は拗ねたように俺についてきた。
「そんな好きなら、弥那先輩と帰ったらいいのに」
ぼそっと呟いた和久を一瞥する。
その一瞬でも目があったのは、和久が俺のことを見ていたからで。
「…付き合ってた時から、一緒に帰ったことねーよ」
「え…」
「弥那、すぐ帰ってくから。
帰りの電車も一本違うし」
「…なんか、ややこしい付き合いしてたんですね、大変そう」
和久はヘラヘラと笑って、俺の跡をついてくる。
今思うと、あんまり恋人らしいことしてない。
休みの日に会う約束も、スマホで連絡取り合うことの方が多かったし、面と向かって話すことなんか、部活の時くらいで。