*続*不機嫌な彼と恋のマジックドライビング
ほどなくして手術は無事に終わった。

手術室からベッドに乗せられて包帯を巻かれた青白い顔をしたお父さんの姿を見た二人は、息をのんで目を潤ませた。

執刀医から手術の説明を受けるために家族が別室に呼ばれ、席をはずそうとした俺をお母さんは

「蓮司くん、朝陽の隣で一緒に聞いてくれない?」

と潤んだ目で頼まれ、朝陽は…

両手を固く握り締めてまた小さく震えていて…

俺は手を伸ばして朝陽の震える手を力強く握り締めた。

朝陽のお父さんは、左あしの大腿骨複雑骨折に、骨盤、肋骨にひび、リハビリまで含めるとかなりの期間入院が必要だ。

早急に朝陽はYAMASE を退職して家を継ぐことになるんだろう。

執刀医の話を聞きながら、会社のこと、朝陽のこと、朝陽の家のことを考えながら俺なりに、頭の中で今後のことをまとめていた。
繋いだままの朝陽の手は、ひんやりしていて俺よりも小さく華奢で、いつもしっかりしていて強気な朝陽も普通のかよわい女の子なんだと改めて認識した。

そして…脳裏に浮かぶ明莉の笑顔に胸がえぐられるほどの鋭い痛みがはしっていた。
< 167 / 211 >

この作品をシェア

pagetop