*続*不機嫌な彼と恋のマジックドライビング
午前零時…長い一日だった。

ようやく家にたどり着いてはっとする。

「あっ…」

慌てて会社を出た俺が手にしていたのは、財布と携帯、車のキーで…

鞄は会社のロッカーで、家の鍵も鞄の中に入っていた。

「家に入れないだろ…」

試しに押したインターホンに応答はなくて、携帯は充電切れ、仕方なく車に戻りそのまま横になり目を閉じた。

**

翌朝、ごみ捨てに来た明莉が、車の中にいる俺に気づいて車の窓を叩いた。

「どうしたの…?こんなところで…」

「明莉…、ごめん家の鍵会社で入れなくて」

「帰ってこないから心配したんだよ。

朝陽さんのお父さんの容態はどう?」

「あぁ、連絡できなくてごめん。
携帯、充電おちた。
お父さんは大丈夫だよ」

俺の言葉に明莉は安心してほっと息をつく。

「ごめんないろいろ心配かけて」

玄関に入りそっと明莉を抱き締めると、明莉はすぐに俺の胸を押して離れ顔を背けた。

「もっもう、こんな時間だから早くシャワー浴びてきたら?
ご飯の支度するからっ!」

逃げるようにリビングに姿を消した明莉を不審に思い、脱衣場で脱いだツナギの胸元に鼻を近づけそのままその場に座りこんだ。

「マジか…」


ツナギからは柔軟剤の香りに混ざり、明莉からは決して香らない甘い薫りが微かに鼻をくすぐった。
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