蝶の親指。弦音は鳴る。
次の日、私たちは担任の先生に、
弓道部の入部届けを出した。
頑張れよという言葉を背に、
顧問の先生のもとへと向かった。
顧問の先生は、矢禾(やのぎ)先生という先生で、初見では名前が読めなかった。
入部届けを出すと、目が空いてるのか空いていないのか分からなかったが、
嬉しそうに受け取ってくれた。
「梓さんと齋藤さんだね。
君たちはどうして弓道部に入ろうとおもったのかね?」
突然の質問に二人にて固まってしまった。
でもこうだ。これしかない。
「弓道に恋をしたからです。
始めて去年先輩方の姿をみたとき、
私の心は一瞬で奪われました。
ひとめぼれだったんです。弓道に。」
私が興奮した口調でそう告げると、
葵ちゃんに加え、矢禾先生も笑っていた。
「面白い子じゃな。
皆に聞くが、そんなこと言われたのは梓さんが始めてだ。」
ほうほうと呟きながら頷いてくれていた。
「齋藤さんは、どうしてじゃ」
私に向けていた視線を、葵ちゃんにおとした。
「私は...真弓ちゃんの瞳に写る姿を見てみたいとおもったからです」
「ほ?その心は?」
「弓道はかっこいいと思いました。
でもそれよりも真弓ちゃんが真剣に、先輩方の姿を見つめているその瞳に、
わたしも一緒に目指したいって。
知りたいって思ったんです。」
「なるほどなるほど。
今年の新入生は面白いなぁと思わされるよ」
おほほほと腰を曲げながら笑う
「それじゃあ明日からジャージで部活に参加してね。
先輩方が教えてくれると思うから」
「「わかりました」」
明日からいよいよ、夢見た弓道部のはじまりだ