蝶の親指。弦音は鳴る。






授業を終えて、急いでジャージに着替えて向かった。

まず、最初から袴を着させてもらえると思っていたからジャージからスタートすることにビックリした。

そりゃそうなのかと感じ、少し悲しくなった。

まだ雪も少し残る北海道の春なので、

室内でやるということに驚きを隠せなかった。

だって最初から弓を引けると思っていたから。

でも違った。

紫の組紐と呼ばれるもので、射法八節を身に付けるのだ。

先輩と一対一で教えてもらう。

「こんにちは!今野加那(こんのかな)っていいます!
真弓ちゃんでいいのかな?よろしくね!」

ぱっちり二重で、元気いっぱいでこっちまで笑顔になってしまうくらいだ。

先輩にゆっくり丁寧にひとつひとつ教えてもらったが、

最初の足踏みからちんぷんかんぷんで、

何度も繰り返し続けた。

足踏みは両方の足が平行でなおかつ、

あいだの角度は60度にならなければならない。

そんなに必要なのかと思ったけれど、とても大事な動作なのだという。

「足踏みが上手くいかないと、

矢所はバラバラになるし、胴造りも上手くできなくて体が引けちゃうの。

だから足踏みは基本中の基本!」

先輩の指導に合わせて行う。

足踏みはクリアした。
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