蝶の親指。弦音は鳴る。
毎日それからずっとこの組紐練習は続いた。

多分1ヶ月位だったとおもう。

武者修行のように永遠に紐で動作を繰り返す。

何の意味があるのか、わからなくなるときだって何回もあった。

「うん!綺麗!ゴム弓にあげる!」

加那先輩が今まで指導をしてくれていたが、

今日は指導がなく、突然ゴム弓にあげてくれた。

回りのみんなから拍手が起こる。

なんだか照れ臭かったのを今でも覚えている。

その日の部活が終わり、また着替えていると、

「ゴム弓おめでとう」と、

目黒くんが声をかけてくれて、すごく驚いた。

目黒くんとはほとんど話したことがないし、

関わりもなくてクラスが同じってだけだった。

「おめでとう」って、まさかいってくれるなんて思ってなかった。

普段あんまりしゃべらないし、クールなのもある。

目黒くんに続いて「おめでとう」と

伊藤くんが言ってくれた。

伊藤くんは、優しくてたまに私が変なこと言っても、

軽く流して笑ってくれる優しい男の子。

あまり自分に自信がないみたいで、

話しかけてくれることは少ないけど、

目黒くんがいったから、多分言ってくれたんだと思う。

「ありがとう」と、言うと

何事もなかったかのように、

目黒くんは着替えだした。

いい人かと思ったけど、そんなことないのかなと一瞬思って気にしないようにした。

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