蝶の親指。弦音は鳴る。
私がゴム弓に上がってから、1週間みんなも上がってきて、部活の要領もよくなってきたのか、

着々とみんな素引きに上がっていた。

私は、莉乃(りの)と美波(みなみ)と一緒に

一足早く巻藁に上がっていた。

はじめて今日巻藁矢だが、矢を飛ばす。

近くで見るとよりいっそう牧草ロールだ。

莉乃は、葵ちゃんと同じくらい小さくて

とにかく可愛い。可愛い以外の言葉が見つからない。

射は、丁寧で、とても模範的な動きをする。

美しい射だと感じる。

美波は、とにかくべっぴんさんで、

まつげがとても長い。うらやましい。

射は、無駄な力が入っていなく、

すべてが線のように流れている。

私は、どちらの面でも負けている。

二人のあいだにはいると、

引き立て役で、射も汚い。

だから、努力で頑張ろうと考えている。

手の内の練習も書かさないし、暇もあれば素引きをする。

「美波ー!弓返りどんなに練習してもしないよー」

弓返りとは、手の内を上手く作り、空間を開けると勝手に弦が返ることだ。

手の力を緩めれば返るが、それは弓返りではなく弓返しになる。

弓返りが出来るととてもかっこいい。

誰もがしたいと思っているはずだ。

「いや、真弓。私もできない」

美波も私の変わらず、ほぼ10度くらいしか回っていない。

45度くらい回るといい。

「「莉乃ー!!」」

「ごめん。莉乃もできない!」

満面の笑みで私と美波に笑う。
< 22 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop