蝶の親指。弦音は鳴る。
「美雪。私橘いく。」

「え?」

朝一番出会った美雪にこういった。

美雪は上手く表せないような変な顔をしている。

「恋したの」

「え?」

美雪、もはや人じゃないよって突っ込みたくなった。

「そんなにかっこいい人いたの?橘に。」

喉から絞り出したかすりごえできいた。

「ううんちがう。弓道に恋したの」

「え?」

なにいってんだおまえって顔で見ないでよ美雪

「弓道するの。橘で。絶対に!」

数秒黙りこんだあと、ゆっくり口を開いた

「真弓がそんなにいうなら、いいんじゃないかな?

目標ができたら、普段以上に頑張れるだろうし

楽に高校行けるんじゃない?」

確かにそうだと思った。

今まで高校にたいして、漠然とした希望しかなかったが、今は違う。
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