イクメン作家と恋心~完全版~(12/30大幅修正済み)
先生の葛藤と自覚。
あれは、写真かしら?
1枚の写真らしき物。すると聞き取りにくい声で
何かを呟いた。聞き取れなかった。だが、しかし
それを言った後の先生の表情は、とても切なそうだった。
今にも泣き出しそうな…そんな表情だった。
女の勘と言うヤツか。私は、その写真に奥さんが
写っているのではないかと悟った。
だって、先生が悲しい表情をする時は、大体
奥さんの時だけだった。
普段は、クールで怖い時もある先生だが、
睦月君が寝静まった夜に
こうやって奥さんを思い出しているのだろうか?
私は、そのまま布団の中に潜り込んだ。
あんな表情を見た後では声なんてかけられない。
ギュッと目をつぶる。
そんなの分かっていた事じゃない。最初から……。
涙が溢れてくる。
どうして先生は、独身ではなかったのだろう。
そんな罰当たりな事を思う自分は、最低だ。
頬を伝う涙が枕を濡らした。
布団に潜ってから何時間、経ったのだろうか
気づくと何だか身体が重い。泣いたから?いや
それよりズシッと漬け物石が乗っているような感覚だ。
もしかして……。
くっ……と力を入れて起き上がった。するとやっぱり
睦月君が布団と一緒にへばりついていた。
睦月君……。
「お、おはよう。睦月君」
「………おはよう」
挨拶をしてくれたが、離れてくれなかった。
部屋全体を見るといつの間にか朝になっていた。
カーテンを開いた窓は、眩しく日差しを浴びている。
朝か……泣きつかれて眠ってしまったのね?
夜中の事を思い出した。胸が張り裂けそうな思いだ。
すると布団にへばりついていた睦月君は、
よじ登り私にギュッとしがみついてきた。
「……睦月君!?」
いつも悲しい気持ちになると睦月君は、励ましてくれる。
だから、深く落ち込まずにいられるのだろう。
するとガチャッとドアが開き先生が現れた。
先生の顔を見たら胸がズキッと痛みだした。
「やっと起きたか?」
「お、おはようございます。先生……」
思わず目線を逸らしてしまった。
昨日の事を思い出すと顔を合わせづらい。
そうしたら先生がため息を吐きながら
「朝食は、バイキング形式になっている。
それを食べたら、ちょっと呼ばれて
行きたいところがあるのだが……お前も来い。
小野木にもご指名だ!」と言ってきた。