イクメン作家と恋心~完全版~(12/30大幅修正済み)
結局ワケが分からないままだった。
一体何だったのかしら?
意味が分からずにしばらく呆然としていたが
しばらくしてお手洗いに行きたくなったので
私だけ向かった。
私は、用を済ませると手を洗いながら
鏡に写る自分の顔を覗き込んだ。メイクをして
それなりの格好をしてきたつもりだが
綺麗かというと微妙なところだ。
白川さんの旦那さんにも言われてしまった。
先生の奥さんだったらそんなこと言われないだろうな。
フッと奥さんと自分を比べてしまう。
比べても仕方かないって自分でも
分かっているはずなのに……。
どうしても比べてしまう自分が嫌になる。
また涙が溢れてきた。
「悪酔いしちゃったかしら……」
私は、涙を拭うと女子トイレから出た。
すると少し歩いた曲がり角で走ってきた人に
ぶつかってしまった。
「キャアッ!?」
「あ、悪い……」
えっ……?
私は、ぶつかってきた人を見て驚いた。
私……この人、知ってる!!
ぶつかってきた相手は、今、ドラマや映画などで
大活躍をしている大人気イケメン俳優の神野飛鳥だ。
帽子を深く被っているが間違いない。
テレビで観る顔とまるっきり一緒だわ!!
いや、むしろテレビで観るよりも何倍もイケメンだ。
「あ、あなたは、神……っ!!」
名前を呼ぶ前に手で強引に口を押さえ込まれた。
うぅっ……苦しい!?
私は、手を退かそうとジタバタする。
「ちょっと静かにしていて。
今、人に追われているんだ……」
お、追われているって!?
すると私を押さえつけたまま
女子トイレの中に押し困れてしまった。
えっ……えぇっ!?
「どっちに行った?あっちを捜せ」
バタバタと人が通り過ぎて行く。
神野飛鳥は、通り過ぎたのを確認すると
ハァッ……と深くため息を吐いた。